意匠設計者が知っておくべき避難安全検証法活用のポイント

避難安全検証法を利用しようとして意匠設計者が陥りやすい注意点と、効果的に利用するためのポイントについて、NBCが解説いたします。

避難安全検証法を使いこなすには知識と経験が必要です。

「避難安全検証法の講習を受けたのだけれど難しくてよくわからなかった」
「某社の避難安全検証ソフトを購入したのだけれど、うまく使えなくて放置する羽目に」

避難安全検証法を設計に採り入れようとチャレンジした意匠設計者のみなさん、こんな経験はありませんか?
審査機関や避難安全検証ソフト販売会社の講習会に参加しても、内容の難しさに頭を抱えることになりますし、どんなに優秀な計算ソフトを導入しても、その後サポートも無いままでは実務に生かすことは難しいでしょう。
避難安全検証を利用し建物を設計するためには、単に法令に従った計算ができればよいのではありません。いくら計算ができても法律をきちんと理解していなくては設計はできません。多くの意匠設計者は、スタート時点からこの間違いを犯し、そのハードルの高さから避難安全検証法の利用をあきらめてしまっているのが実情です。

ここでは避難安全検証法を利用する上で意匠設計者が陥りやすい注意点と、知っておきたいポイントを説明します。

(1)基本的な考え方と仕様設計との違い

避難安全検証(性能設計)の基本は「煙に曝されずに避難できる」ことを告示1441号(避難安全検証法)に示された方法で確認することです。具体的には、在室者の避難終了時間(対象室からの脱出時間)と煙降下時間(対象室で煙に曝されるようになるまでの時間)を算出して比較し、常に煙降下時間の方が大きくなることが必要です。これを各居室と階全体との2段階で確認します。面倒な計算式はさておき、ここでは基本的な考えだけをご理解ください。詳しくは以下のページをご参照ください。

平成12年5月31日 建設省告示第1441号 第1~第4(居室避難計算)

平成12年5月31日 建設省告示第1441号 第5~第8(階避難計算)

仕様設計との大きな違いは、仕様設計では建築基準法で示された仕様であれば室毎の単純なチェックだけで済んだものが、避難安全検証法では建物全体について計算し確認する必要があるということです。そのため、チェックが非常に面倒であること、天井高さや扉の大きさ、夫々の性能が大きく影響するということです。

(2)計算特性

小さな室は居室検証が成立しにくい

仕様設計であれば、天井から80cm以内の範囲に床面積の1/50以上の面積の排煙窓を設置するか、内装を不燃とし100㎡以内という条件付で告示1436号を利用すれば無排煙とすることが可能です。対して避難安全検証法では、告示1441に示される方法に従い、各階毎、すべての室で煙に曝されずに避難可能であることを検証するのですが、告示の計算式では出火直後から一定の大きな火災(定常火災)を想定しているため、検証がクリアしない場合が多々あります。特に天井が低く面積の小さな室は蓄煙体積が小さいため、クリアしにくい傾向が大きいです。特に事務室のように積載可燃物の発熱量が大きい室ではこれが顕著に現れます。

廊下に面する火災室からの出口は防火設備にする必要がある

出火室からは扉を通じて煙が廊下に伝播してきます。告示では在室者は各居室から廊下を通じて階の出口に避難することが想定されているため、避難困難なレベルまで煙が降下する前に廊下を通過する必要があります。また、出火室以外の在室者は火災の発見に3分を要すとされているため、煙降下時間は3分以上でないといけません。ところが、仕様設計と同じ感覚で設計を行うと廊下の煙降下時間を3分以上にすることはまず不可能です。そのため、各火災室から廊下に通ずる扉を防火設備とする必要が生じます。廊下部分の蓄煙量が極端に大きな特殊な建物以外は必ずこの問題は生じますので設計当初より考えておく必要があります。

(3)計算方法自体の問題点

告示の計算方法についても、いろいろと問題点が指摘されています。いくつか例を挙げて説明します。

火災室に面した風除室の扱い

告示1441号では、階の煙降下時間は、階の出口が設置されている室で算定することになっています。そのルールに従って下図のような「火災室に面した風除室」の階煙降下時間を算定すると次のようになります。

火災室である売場での煙降下時間(1.8mまでの煙降下時間)は

Ts = 2.995分

ところが、その煙伝播室である風除室では、
扉1(一般扉)から煙が漏出するまでの時間(2.2mまでの降下時間(1.785分))+ 風除室煙降下時間(1.8mまでの煙降下時間(0.067分))で計算され

Ts= 1.785 + 0.067 = 1.851分

出火室よりも、伝搬先の室の方が早いと算定されてしまいます。

さらに、売場と風除室の間に設置される扉の高さを3.0mとするとその差はもっと顕著に表れ、風除室での煙降下時間は

Ts = 0.000 + 0.053 = 0.053分

とさらに早くなってしまいます。
こういった結果になることを想定し、風除室の扱いを考える必要があります。

階煙降下時間算定方法

下図(1)では、階煙降下時間は「廊下」で算定します。在室者は、避難経路となる廊下で避難困難なレベルまで煙が降下する前に火災に気付き避難完了できなくてはなりません。A室で火災が発生した場合、火災室以外のB・C室の在室者は火災に気付くのに時間を要すると想定し、避難開始時間に3分を加えて階避難終了時間を算出し、廊下で算定した煙降下時間と比較します。すると、廊下の煙降下時間を遅らせるために、各室から廊下に面する扉を防火設備にする必要が生じます。

ところが、下図(2)のように階出口の直前に前室(附室)を設置すると、階煙降下時間は「前室(附室)」で算定することになります。よって、廊下から前室に通ずる扉を防火設備にすれば、前室(附室)での階煙降下時間を遅らせ、検証をクリアすることができてしまいます。そうすることで廊下の煙降下時間はまったく考慮されなくなり、A・B・C室から廊下に面する扉を防火設備にする必要もなくなります。しかし、B・C室の在室者は実際の避難経路である廊下で煙に巻かれることになってしまいます。

計算方法の問題点は、これら以外にもまだたくさん存在します。また告示解釈についても、審査機関や地域、担当者によってもまちまちで統一されておらず、一筋縄ではいかないことを常に心に留めておくことが必要です。

いろいろと述べましたが、付け焼刃の生半可な知識では避難安全検証法を使いこなすことは困難だということがご理解いただけたと思います。避難安全検証法をきちんと理解し、実務に活用できるようになるには、少なくとも2年以上の専門の勉強と実務経験が必要だと、NBCは断言します。これを、意匠設計を専門とする設計士が多忙な業務の片手間に勉強するのでは、おそらく何十年もかかるでしょう。時間を割いて講習会に参加したり、高価なツールに投資するよりも、本業である意匠設計の勉強に打ち込まれる方がよほど有意義だと考えます。

避難安全検証法のサポートはNBCにお任せください。全国1,500件の豊富な実績と確かな経験に基づく知識で、最適な設計方針をご提案しいたします。

ぜひ、NBCにご相談ください。ご連絡お待ちしております。
Tel:078-332-4107

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